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2023年4月30日日曜日

「デジモンゴーストゲーム」の感想とススメ

 

デジモンゴースト「ゲーム」の意味も本編を追っていると解ってくるかも…?

デジモンゴーストゲーム(全67話)の視聴が終わりました。

tri以降あまり良い噂を聞かなくなってしまったアニメデジモンシリーズ、今年に入ってからオフィシャルアカウントが究極体PVを公開したりユーザーがぼちぼち話題にしているを見かけて少しの気まぐれから始まった視聴でしたが、結果としてはとてもとても良い体験になってくれました。あれこれ綴る前に自分は一応無印~アプモンまでオンタイムで過ごした経験があります(但し細かい記憶はおぼろげ)とだけ。



「こういうのでいいんだよ、こういうので」と頷きっぱなしの日常描写。
中学生の財力と思えない遠出することもしばしば。「AI、また増えてね…?」

  • 5クールあまりの1話完結方式に耐えうる世界設定

ゴーストゲームは大筋はあれど、デジモンが起こす怪奇事件を解決していく1話完結の物語が大半を占めていました。その世界観は「ホログラムをはじめとした新技術が発達した近未来」という設定であり、デジモンがリアライズ(実体化)していてもそれを見た人物達は決まって「良く出来たAIホロ(グラム)だなぁ」と特に驚きもせず、自然と人間世界に溶け込みパートナーと日常を謳歌しています。デジタル化が進む現代においてデジモンの設定は面白い世界観に昇華出来る絶大なアドバンテージであるとは常々思いますが、ことAI技術が注視されている昨今でこの作中描写は「本当にそうなってしまうかも?」と期待させるような夢の持てる距離感でした。

メインメンバーであるガンマモン、アンゴラモン、ジェリーモンのパートナーである宙(ヒロ)、瑠璃(ルリ)、清司郎(キヨシロウ)は皆シリーズでは馴染みのある悩みや欠点を抱えた子供…ではなく、判断力や行動力に優れ、各々が優秀なスキルも持ち合わせている所謂「出来た」子供達。つまり今作は「子供達がデジモンと共に苦難を越えて成長していくストーリー」にあまり比重を置いていないのです。クロスウォーズのタイキなど、シリーズで前例がなかった訳ではないですが中々思い切った構成と言えます。とはいえたくさんの試練が用意されており、特に襲い掛かるデジモン怪異のホラー描写の多くが情け無用(これに関しては後述)だったりと話の起伏というかバランスはちゃんと取れています。

結果、のびのびと暮らしているデジモンと人間達の生活風景が出来上がりました。所感ですが、02やテイマーズで見られたリアルワールドでのデジモンとのワチャワチャが好きだったユーザーには絶対ぶっ刺さります。




何かと話題になったのも頷ける強烈な絵面の「キノコ回」。
こんな目にあっても終わりにはケロっとしている宙達、大人すぎない?


  • なんちゃってかガチか?ホラーテイスト

そもそも一部デジモンを除いて「人間世界でデジモンがある程度自由に行動するためには人間の感情の起伏がファクター」が基本原則となっており、それを誘発させる為には…?とまるでホラーのようにデジモンが人間にあれこれ仕掛けるわけですね。

そのやり口といったら迷惑なことに実にバラエティで、時間を奪い老化から始まり、勘違いからミイラ化未遂、人形にされる、植物にされる、虫にされる、ゾンビで感染拡大、デジモン化、首から捕食、顔や感情が奪われる…と普通に人死にが起きるレベルのアレコレが毎度起こるので毎度緊張感があります。とはいえこれらは単発エピソードに味を持たせる為の所謂舞台装置であり本懐はどこまでいっても「デジモン」なので、「"恐怖"という要素が物語として集約されていくか」という見方はしなくて良い程度のものでした。

「ホラーがテーマ」だと思って視聴すると若干肩透かしを喰らう感は否めませんが、巻き込まれる人物や個々のデジモンの強烈な個性にも繋がっており、人によってとあるキャラが強く印象に残ったりするんじゃないかなぁと思います。自分は53話「知識王」を良く覚えていますね。脚本と演出の方が良い仕事をしていました。




怖くても人助けを忘れない清司郎と、ニンゲン社会に興味津々なジェリーモン。
日々を過ごしてく内、二人はある共通の気持ちに気が付いていきます。

  • 清司郎&ジェリーモン、限界突破!限凸!

頭脳明晰な天才プログラマー&エリートオタクで超ビビりな清司郎と、彼を引きずり回すトラブルメーカーのジェリーモン様(ジェリーモンは清司郎に様付けで呼ぶよう命令している)のペアのやり取りがとにかく可愛い!歴代でも珍しい「男子パートナー&女性型デジモン」の組み合わせで、いつも騒がしく時に頼もしく活躍してくれます。初登場は所謂メスガキ…を通り越してもはやクソガキとも言える程のお騒がせだったのが、助けてくれた清司郎こと「ダーリン」のことが大好きに。でもやっぱりクソガキなのでイタズラしちゃう。なんだこのオタクが喜びそうな設定は?オタクはジェリーモン様が好き。

ちなみにジェリーモンのCVはアプモンでも登場し、自分が大好きなリーンの翼やGのレコンギスタでもヒロインを演じた嶋村侑さん。成熟期進化のテスラジェリーモンではギャルのような喋り口調、完全体進化のテティスモンでは清楚なお嬢様口調と誠にあっぱれなお芝居を披露してくれていました。そして究極体進化は(上記の作品の)監督繋がりか??と思わせる衝撃のビジュアル、カッコいい路線に帰結するのは清司郎の視点も入ってそうで自分はとても好きです。




清&ジェリと同じくらい、宙とガンマモンも大好きな二人!
パートナーの子供ではなく今回はデジモンが大きく成長していくストーリーです


  • 宙とガンマモンを軸にした「スベテヲ喰ラウモノ」の物語

主人公の宙と、その弟としてデジタルワールドで消息不明となった父親から託されたガンマモン。見知らぬ地で友情を育む者、支配しようと襲い掛かる者、順応出来ずに朽ちていく者…とデジタルワールドから送り込まれたデジモン達の多種多様な境遇と、二人が向き合い戦っていくことがゴーストゲームの縦軸のお話になっています。

ゴーストゲームでの戦いの大半は不殺や和解で終わるものの、やむを得ず倒さないといけない状況や、事件が解決しても首謀者や被害者が不幸な境遇で終わってしまうケースも結構あります。これまでで述べた晴れやかな日常とは打って変わって、異なる文明や種族同士の遭遇が必ずしも良い結果ばかりではないことを、時に厳しく突き付けてきます。しかしこの険しい道筋が、原因の解明や思いがけない助け船となることがあり要所要所でしっかりと連続ドラマとして繋がっていて好感が持てます。ここら辺に信頼を置けたことも視聴の継続になったと思えますね。ちなみにこの辺りの謎解きは本編中でもなんと最後の数話で駆け足気味に行われるのですがちゃんと盛り上がってみせて、拾われるべき部分はしっかりと説明してくれたのでホッとしました。まぁリアルタイムで追っていた方は心配してたというか大分焦らされてやきもきしてただろうなぁと。

人間とデジモンのめぐり逢いとは結局何をもたらすのか?その答えは物語のクライマックスと、この作品を彩った楽曲に帰結することになります。




「カノーヴァイスモン、究極進化!シリウスモン!!」
シリーズお決まりのオメガモン系列、デザインが本当に秀逸で玩具が超欲しい!

  • 歴代最高クラスの挿入歌

ボーカルはシリーズ初参加の増倉義将氏、そして作詞作曲は歴代シリーズでもその名を馳せた大森祥子&渡部チェル氏のタッグで送る二曲の進化挿入歌「First Riders」「MAKUAKE」、進化バンクという偉大な演出と共に数多くの名曲を輩出してきたデジモンシリーズですが、今作の楽曲が自分の中で最大の決定打になりました。逞しいボーカル、らしくも飾りすぎない言葉選び、壮大に広がるメロディ…とどれをとってもこの作品、ひいてはデジモンシリーズとマッチしつつ一楽曲として至上の出来上がりとなっています。そして両楽曲とも、クライマックスのフレーズでは…シリーズファンなら必聴です。

総じて「どんなことでも、挑戦してきたことはかけがえのない自分の冒険譚」であることを肯定する歌で、宙とガンマモン達を強く強く後押しする…と、前述の「良いも悪いも起きる」ことへのアンサーにもなってました。最終決戦では更にシンクロを見せる訳ですが筆舌に尽くし難く、歴代一盛り上がるバトルシーンと言ってもいいかもです。




「いつか今日を不意に振り向く日来たら誇るさ」
「だって君と挑戦した全てが…」


  • 総じて

フロンティア以降、表現の形からテーマまで模索と差別化の挑戦を繰り返していたアニメデジモンシリーズですが、今作は表現こそ違えど根幹には所謂四部作らへんのSF的面白さ、パートナーシップの"エモさ"を再び引き出そうとしている姿勢が見え隠れしていました。歴代でも相当に長い話数に対して縦軸のペース配分はやや気になりますが、個人的にはシリーズのネオスタンダードとしても迎え入れられそうな地盤のしっかりした作品でした。過去の事例を何かと引きずっている最中のアニメシリーズですが、02の新作劇場版は多少期待の目で見れるかも、ゴーストゲームはそう思わせてくれる「キラキラ」でした。

その他書き損ねた細かい箇所は振り返りながらツイッターで呟いていこうかなぁと思います。ここ、アンゴラモンの洒落たポエムが入るとこです。


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